忍者ブログ

更新履歴

2011年1月3日
・縮小リニューアル

thank you

メールフォーム

コチラから

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

そう云えばこんなこともあったのだと、俺はアンタの隣で笑い合って。


白い煙が揺れる。
温かいとは程遠い、冷たい風が隙間を通り過ぎる。
俺とアンタの間の隙間を。




アンタと同じ銘柄の、苦い煙草を吸いながら、俺は空を見上げていた。
アンタの隣に座り、冷たい石に手をつきながら。
手から伝わるその石の冷たさが、体中に染み渡る。
けど、そんな事も気にせずアンタの隣にいた。
なんとなく、今はアンタの側にいたい気がしたから。
こんな事アンタに言ったらきっと恥ずかしさも気にせずに、思いっきり抱きしめてくるんだろうな。

「・・・はぁー・・・さみっ・・・」

そろそろ春だというのに、いっこうに暖かくなる様子はない。
いやむしろ、もう春なのではないだろうかと、疑問に思ってみたが、全ては定義しだいだと結論づけた。
秋とは違い、こういう季節は寒いと空の色が悪い。
青空というよりも、曇り空にかなり近い空を見上げながら苦笑した。
まぁアンタは雨じゃなければいいと、あまり空には興味を示さないだろうけど。
俺としては、せっかくアンタに会うんだから、やっぱり良い空の方がいいと思う。
アンタと、どうせなら俺の好きなものを共有したいしな。
それに、アンタの煙草の白い煙は、青い空のほうが映える。

「・・・そぉいやぁー・・・」

ふと空と白い煙の事を考えていたら、会って少したった頃の事を思い出した。
アンタが俺の担当上忍になり、そして修行し始めた頃。
まだ俺も下忍成り立てで、こんな具合で任務なんてこなせるのだろうかと、疑問にも思っていた。
アンタも教える気があるのかないのか微妙で、たぶんまだ俺たちを観察していんだと思う。
修行や任務帰りには必ずと言っていいほど、甘栗甘に寄っておごってもらっていた。
そしてちょっとしたランクの高めの任務の帰りには、焼肉を。
アンタの財布の中身を何度気にしたことか。
そうやっていた日々の中で、一度大きなヘマをした事があった。
気がつけば俺は、アンタの腕の中に納まり、山のどこかにあったのであろう洞窟にいた。
見ればアンタは足を負傷し、そして全身傷らだけ。
俺はなんとなくだけど、肋骨を少し折った事がわかった。

「あん時は・・・まじヤバイって思ったな・・・」

思い返して苦笑する。
全ては予想外の敵の出現とか、そんな事ではなかった。
いのが崖から落ちそうになったのを俺が助け。
けれどその反動で俺が崖から落ち、アンタが俺を助けようと追いかけた。
なんか馬鹿みたいだ。
アンタも俺も。


「・・・けど・・・」


 
* * *



洞窟の中に、外で激しく降る雨の音が響く。
その冷たい音に、俺は微かに震えた。

「・・・どうした?寒いのかシカマル?」

俺の体を気遣うように抱きしめたい温かい腕が、さらに包むように俺を抱きしめた。
その温かさにホッとする。
けど、そんな事を言うわけも、表情に出すわけもない。

「・・・別に・・・それいうならアンタのほうが寒そうだぜアスマ。」

ベストを俺に着せているせいで、ひどく寒そうなその姿。
洞窟の中は意外に寒くなるもので、ベストを着せてもらっているが、それでも寒かった。
そこにまた外は雨ときたから、さらに冷える。
大丈夫なのだろうかとその顔を見上げてみると、そこにはやはり寒いのか、堪える表情。
そういうところが先生らしいなと、苦笑した。

「ここでアンタに倒れられたら俺困るんだけど?」
「俺はそんなやわじゃねーよ。このぐらい大丈夫だ。」

そういいながらも微かに震えているその腕。
その様子に俺は苦笑しながら、そっとその腕の一つを包むようにした。
そんな俺の行動に驚いているのが、面白いぐらいに分かった。

「あんま変わんねーかもだけど・・・ないよりはましだろ?」

ドクドクと波打つ鼓動を感じる。
それは自分のか、それともアスマのなのかは分からない。
もしこれが自分のだったら、アスマに聞こえてしまうかもしれない。
そう考えて恥ずかしい気がしたが、その腕を離さなかった。
温かい腕に、絡みつくように包み込む。
二人の間を行き来する熱。
その心地よさに俺は、ゆっくりと瞳を閉じた。


*  *  *



「・・・温かかった・・・」

眠りから覚めた時には、もうすでに木ノ葉の病院だったが、腕の熱はまだそこにあるような気がした。
自分の体に染み付くように、その温かさが。
その温かみを思い出して、思わず頬が緩んだ。

「アンタとの始まりは・・・もしかしてその時だったの・・・かもな・・・」


アンタの温かさを知った、あの時。


「なぁ・・・ちゃんと覚えてるか?」

横のアンタへと声をかける。
冷たい石についていた手を上げ、そしてそっとアンタに触れた。

「ったく・・・メンドクセーけど俺は全部覚えてるんだからな・・・」

アンタは冷たいなと呟いた。
そして包み込むように腕をまわした。
あの時のように。

「・・・俺はいつまでも覚えてるからな・・・」

そう言って、笑ってみせた。

アンタもきっと笑ってるだろうと、そう思いながら。





白い煙と花が風に揺れる。

一つの冷たい墓石の前で。





{あとがき}
†SeventhHeaven†様主催の素敵企画に投稿させていただきましたアスシカです。
お題は、[そ]そう云えばこんなこともあったのだと、僕は君の隣で笑い合って。
もうこのお題を見た瞬間、書きたいと思いまして、恐れ多くも投稿などといった事をしてしまいました。
PR

Trackbacks

TRACKBACK URL :

Comments

Comment Form