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2011年1月3日
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コチラから

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華枯夢

枯れた華の花弁が、ヒラヒラと、まるで寝て見た、あの光景の如く舞い落ちる。




聞こえる声。
それはまだ少年と呼んでいいような、高めの声。


「・・・んぁっ・・・あぁ!・・・」


解けた黒髪が、その白い肌の上で踊る。
ほんのりと赤みがかった、その滑らかな白い肌の上で。


「・・・んっ・・・いやぁっ・・・」


そんな肌へと、男が噛み付くようなキスをする。
その男の銀色の髪が肌をくすぐり、そしてどけば、肌の上には赤い華が咲いた。
男はその華に今度は、優しく舐めるようなキスを落とす。


「・・・あっ・・・カカシ・・・さん・・・」


少年はそれに溺れるように、男の名前を呼ぶ。
その声に男は笑みを浮かべると、貪るように少年の唇にキスをした。
まるで何かに飢えているかのような。


「・・・んんっ・・・」


少年の漆黒の瞳が震え、そこから雫が流れた。





* * *





「・・・ねぇシカマルくん・・・」


寝ようとした隣の少年の黒髪に触れながら、そっと呼びかけた。
するとシカマルはだるそうに、俺のほうへと顔を向けた。
ほんのりと色気をかもし出す、切れ長の漆黒の瞳。
だるそうな表情をしながらも、その瞳の奥は鋭いぐらいの光を秘めている。
英知の光というのだろうか、それが彼を凛としているように時折見せる。


「なんすか?」


桜色の唇が、小さく動き、言葉を言う。
思わず見とれてしまうのは、惚れている故だろうか。


「なんでシカマル君は、俺に抱かれるの?」

「嫌なんすか?」

「いや別にそういうわけじゃないけど・・・」


欲しいと思っていた答えをもらえなく、どうしようかと視線が泳ぐ。
今更ながら、言わないべきなのだろうかと迷う。
けど、視線を戻し、その黒い瞳と目があった時、自然と口は動いていた。


「アスマはシカマル君の事好きなんだよ?」


てっきりこんな事を言えば、この少年は動揺するかと思った。
このいつも冷静な少年でも動揺ぐらいするのではないかと。
けど、返ってきた言葉は、いつも冷静な少年の応えだった。


「それが?」

「それがじゃないよ!・・・だってシカマル君はアスマが好きなんでしょう?」


思わず大声を上げて、上半身を起こし、シカマルを見下ろす。
そんな俺の態度に、シカマルは僅かに眉間に皺を寄せると、ぐるりと体を反対にむけ、顔を俺から背けた。


「好きっすよ。でも、アスマが知っているのは本当の俺じゃないっすから。」

「・・・本当のシカマル君?」

「こんな風に、アンタに抱かれて、喘いでいるような俺は、アスマの知っている俺、アスマの好きな俺じゃない。」


淡々と、まるで感情のない機械かのように言うシカマル。
そんなシカマルの様子に、俺はただ口を開けて驚くばかりだった。


「こんなにすんなりとアンタに抱かれている汚い俺をアイツは知らないっすからね。」


機械のようなシカマルの口調。

けれど、彼は人間だ、しかもまだ子供、そんな機械のようなわけが無いんだ。
彼はちゃんと、心をもっている。
他人のために涙することもできる、温かい心もその中にはあるんだ。

そう思った瞬間、思わず、その小さな体を背後から抱きしめていた。
シカマルの口から、そんな事を聞きたかったわけじゃない。
自分自身を傷つけるような言葉なんて、彼の口から出したくなかった。


「ごめんシカマル君、余計な事だった。」

「別にそんな事ないっすよ。」


やはり淡々とした声。
俺はそんな彼の声に、ゆっくりと目を閉じた。
僅かに感じる寂しさ。


「それじゃ・・・シカマル君。」

「・・・はい?」

「・・・俺がシカマル君のこと好きなのは知ってるよね?」

「・・・知ってるっすよ・・・」


機械のように返す彼の言葉に、僅かに戸惑いが入る。


「それじゃ、なんで抱かせてくれるの?同情?哀れみ?」

「・・・違う・・・」


間を空けて返ってくる彼の言葉は、動揺が走っているのが分かる。
俺はそんな彼の声に、唇を噛み締める。


「それじゃなんで?」


俺は彼を抱きしめながら、小さな声で、彼に聞いた。
けど彼の応えは返ってこなかった。

その後一言も喋らなくなった彼を抱きしめながら、寝ることもできずに夜は明けた。





* * *





コトリ。

置かれた駒に目を向ける。
それから頭の中の筋書き通りだと、考えていた通りの場所へと駒を置く。

コトリ。

静かな二人だけの空間に、小さな音が響くだけ。
その音が好きだと思うのは、それがこの男と二人きりの場所にできた音だからだろうか。
目の前の男の髭をチラリと見た後、また駒へと視線を戻した。
男が出しうる手を考え、戦略を練った。
この男はなかなかのやり手だ。
俺が考えている筋書きとは違う手を使う事が、度々ある。

コトリ。

ほら。
駒を置いた男のゴツイ手を眺めながら、新たに戦略を練るために頭を働かせた。
男の手はやはり、俺が考えていた以外のものだった。
口元が僅かに上がるのを感じた。
それを押さえられない自分に、さらに苦笑した。

コトリ。

戦略が練り終わると、駒を置いた。
次の瞬間、男の表情が歪んだのが分かった。
そろそろこのゲームは終わりだと、視線を男の瞳へと向けた。
黒い大きめの瞳。
その瞳が今は俺を見ていないことに、少々イラついた。



「・・・まいりました。」


男―アスマの声に、余計な事を考えたくなくて、そのまま後ろに倒れた。
木の冷たい感触が背に伝わる。


「これで122敗目だなおっさん。」

「おっさん言うな。」


天上を見つめていた視界に、白い煙が下から現れる。
それからアスマの愛用している煙草の独特の匂い。


「俺にも一本くれ、アスマ。」

「餓鬼の体には悪いぞ?」

「おっさんの体にも悪いだろうーがよ。」


ククッと喉奥で笑うと、体を起こして盤の向こうのアスマを見た。
片手に煙草をもち、顎の髭をいじっている姿。
僅かに片方の口の端を上げ、笑っていた。


「俺はもう毒されてんだよ。今更だ。」


そういって、煙草を咥え、白い息を吐き出した。


「間違いなくアンタは肺がんで死ぬな。」

「とりあえず殉職じゃないだけマシじゃねーか?」

「アンタそれでも忍かよ。」

「ちげーよ。肺がんになるのはまだ当分先だろーから、当分死なねーって事だ。」


おっさんの勝手な理論。


「アンタが肺がんで死ぬのが当分先とは決まってねーがな。」


でも、当分先なら肺がんの方がいいな、と思って苦笑した。
それから目の前の盤を片付け、また寝転がった。
今度は視線を空へと向ける。
縁側から見える空は青くて、何と言うか晴れた日によく見る空というやつだ。
あいにく今日は雲は浮かんでいない。
それが残念だったが、今日はさほど関係ない。


「なー・・・」


アスマへと声を向ける。
そんな俺の声に、白い息を吐いた後、おっさんは顔を俺へと向けた。
寝転がる俺の横で、外を見るように座るアスマ。


「・・・あ?」

「聞きたいことがあんだ。」

「・・・なんだ?」


白い煙が空へと伸びる。


「人って、好きでもないやつに抱かれる事ができるのか?」


伸びていた白は切れ、静けさが広がる。
海の青さよりも薄く。
されど海より広い空。
そこに白はいつしか消えてなくなる。


「昨日、カカシさんに抱かれた。」


淡々と話す己の口。
少なからず驚いてはいた。


「そしたらカカシさんに、何で抱かれたか聞かれたんだ。」


こんなにもスラスラと言えるとは正直思っていなかった。
こんなにも無感情に言えるなんて。


「答えられなかった。」


そこで言葉を終わらせ、ゆっくりと眼を閉じた。
光が遮断されたまぶたの奥で闇が広がる。
その時初めて、心臓が大きく跳ね始めた。
鼓動が頭の中で響く。
ドクドクと流しだされる血が、早く体中を巡る。
僅かな眩暈がした。
おそらくそうさせているのは、自分の中でできた後悔という気持ちのため。
けれど、もうどうしようもなく、そのまま眼をつぶり続けた。





* * *






俺の横に座る少年は、俺の同僚に抱かれたと、淡々と話した。


忙しい毎日の中で、ようやくできた休み。
ちゃんとアイツの休みを確認してから、将棋をやろうと誘った。
それは下忍時代ではよく見る光景だったが、アイツが中忍になり、俺も下忍担当を外れてからは難しくなった。
アイツは母親から持たされた惣菜を手に、いつもどおりの無愛想な顔で俺の家へと来た。
正確には、猿飛家本家であるが。
親父である三代目火影が死んでからは、将棋をするときはこの家をよく使っている。
移り住んでもいいのだが、一人身の俺には少々でかすぎる家でもあった。
親父はよくこんな家で一人で住んでいたと思う。
まぁ、それは母との思い出があるからであろうが。


「おっ!美味そうじゃねーか!お袋さんに礼言っておいてくれよな。」


アイツーシカマルから受け取った惣菜を冷蔵庫に入れると、ついでに中からビールも出した。
いちお二本出してみるが、アイツはおそらくビールは飲まないだろう。
未成年だからとかそういうのではなく、ただ単にアイツは日本酒派だからだ。
俺も日本酒は好きだが、なんとなくビールの箱買いが簡単だからビールにしている。
それから適当なつまみも持ち、準備をしているシカマルのもとへと行った。


「おっ、もう終わってるか?」

「準備万端だぜ、おっさん。」


ニヤリと笑ったシカマルの表情に一瞬ドキリしてから、こちらもニヤリと笑う。


「今日こそくそ餓鬼の息の根止めてやるか。」

「やれるもんなら、やってみろ。」


こういう時だけ、この目の前の少年は、子供らしい表情に一種の艶やかさをかもし出す。
いつも面倒くさそうに、だるそうにしていたり、無邪気に子供らしくしたり。
艶やかや、妖しいという言葉からはかけ離れているはずであるはずなのに。
確かに、この少年は大人の俺ですらドキリとするような艶やかさを時に出すのだ。
艶やかさ、色気と呼んでもいいかもしれない。
それも決まって、俺と二人きりの時。
否、"俺と"二人きりの時とは限らないかもしれない。
この少年は他の男と二人きりの時も、このような表情をするのかもしれない。
そう考えた瞬間、胸の奥でチクチクと何かが痛かった。


「それじゃ、俺からいかせてもらうからな。」


その痛みを誤魔化すように、駒を進めた。


コトリ。


二人の空間に音が響く。





* * *






「・・・なぁアスマ・・・どう思う?」


人って、好きでもないやつに抱かれる事ができるのか

目の前の少年の、漆黒の瞳が俺を放さない。
喉の奥がカラカラと、そこだけが砂漠のど真ん中にあるようだ。
乾いているどころじゃない、ヒリヒリと痛い。
いくら水を流し込んでも、もうその痛みは治らないのでは、この乾きは消えないのでは、そう思わせる。

「俺は・・・カカシさんに何て答えればよかったんだろうな・・・」


小さくなっていく少年の声。
力なくしていく、儚いまだ声変わりの前の高めの綺麗な声。


「それとも・・・俺は本当は・・・カカシさんの事好き・・・なのか?」


困惑に混じる、泣きそうな弱々しい声。
少なくとも俺にはそう聞こえたんだ。
気がつけば、俺は少年―シカマルをその場に押し倒していた。
その桜色の唇を貪りながら。
白き雪のようなその肌を撫で、乱暴にその服を引き裂く。
そして、貪っていた桜色から唇を離すと、今度はその細い首筋へと噛み付いた。
彼の全てを食らおうとするかのように。


その唇も
その首も
その肌も
その体も
その瞳も
その心も

全て全て 食らいつきたい
跡形もなく 食い尽くしたい


「んあぁっ!・・・やっ・・・!」


耳に流れ込む彼の声。
俺を狂わせる、シカマルという少年の。


「・・・俺を呼べ・・・シカマル・・・」


体中に咲いていた赤い華の上からまた華を咲かせ、俺は彼に囁いた。

お前の口から、他の男が好きかもしれないなんて、聞きたくない。


「・・・シカマル・・・」


華が満開に咲き、桜色にそまった肌。
涙をためた、闇を思わせる漆黒の瞳。
夜の色に染め上げたような黒く長い髪。
普段は見せない、溢れんばかりの艶やかさ。
その全てを俺は飲み込みたい。
これは、どうしようもない一人の男の欲望。
人間としての独占欲と嫉妬。


「・・・あっぁ・・・アスマぁ・・・」



呼ばれた名に笑みを浮かべ、俺は欲望という名の海に溺れた。





* * *





開いた目の向こうで、その男は気持ち良さそうに寝ていた。
赤ん坊や餓鬼ではないからあまり使いたくはないが、いわゆるスヤスヤと寝ている、というやつだ。
スヤスヤなんて可愛い言葉は、この熊のような男には到底似合わないがな。


「・・・アスマ。」


そっと呼んでみた。
別に起きる事を期待して呼んだわけではない。
ただ、なんとなく呼んでみたくなったんだ。
この横の大きな熊が消えないうちに、そう思っただけなんだ。


「・・・アスマ。」


そっと呼んでみる。
今度は起きることを期待して。
のっそりと起きて、俺を抱きしめてほしかったから。
別にコイツがこいしかったからじゃない。
裸に薄い布一枚の格好だから、寒いからだ。
こんな熊のような男になら、きっと抱きしめてもらった温かいだろうと思っただけなんだ。


「・・・アスマ。」


さっきよりも小さく呼ぶ。
別に眠りを妨げたいわけではない。
ただ、俺の名前を呼んでくれる事を期待しただけなんだ。
俺を見つめながら、いつものように優しい瞳で笑いながら、俺を呼んで欲しかっただけなんだ。


「・・・アスマ・・・」


アスマに咲かされ、肌に残された華に触れながら、シカマルはその瞳を閉じた。
漆黒の瞳が閉ざされ、代わりにその目尻から涙が零れ落ちた。
音もなく、ゆっくりと。
そして僅かに瞳を開いたかと思うと、幸せそうに微笑んだ。
名前を呼んだのは、この男の瞳を見たかったからじゃない。
ただ、その名が愛しかったからだけなんだ。



「・・・ありがとう・・・アスマ・・・」









その言葉に同調するかのように、肌に残された華は、また美しく色づいた。
















end



:::::::::::::::::::::::: 乙様との相互記念に送らせていただきました小説です。
アスマ→←シカ←カカシ という形になるように頑張ってのですが・・・どうかな苦笑
どうかこれからもよろしくお願いします!!!
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